憧憬。春
梅昆布茶

かなしみをください
あなたの傷口のように深い夜に

ことばをください
書き忘れた遺書のように
端正に綴ってみたいのです

桜が眼に沁みてなぜかせつなく
なにかを教えてくれるのですから

春だけはつまらない感傷を
ゆるしてくれる気がするのです

残された情熱はどこにあるのだろうと
隅々までさぐれば

かすかに貝殻のような音がして
風が嗤って去りましたが

いつか花盗人となって誰彼となく
哀しみをぬすんで参りましょう

いまとこれからの一番だいじなものを
決めたいとおもっているのです

そしてそれに従おうと
考えているだけなのです

あなたの哀しみのなかに
それがあろうかと
おもってもみるのです

もしそれが解ったならば
ぼくの哀しみの
性質がわかろうとも思うのです


自由詩 憧憬。春 Copyright 梅昆布茶 2014-03-31 19:10:50
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