頭 胸 腹
ただのみきや

別に昆虫の話じゃありません
これは一種の開き直り
あなたは平和主義者ですか
わたしは違います

大仰に言ってみても
所詮 頭と胸
頭で知った理想を
胸にぶら下げて生きること
本音と建前の結局は建前
逆境激しからずの日常に
誇らしげに披露するもの
胸に飾ったピカピカの勲章
パレードで愛想良く振る
お手軽なミニフラッグ

だけど許容範囲を超えた嵐が来ると
何処かにふっ飛んでしまう
「ソウテイガイだ」てね
添付された情熱なんて
闇夜に吹き消される提灯よ
自慢の屋号も読めやしない
白い煙が幽霊みたい
か細い声で言うでしょう
「ソウテイガイだ」てね

腹を括った生き方なんて
大げさなことは言いません
腹がへったら売っぱらえ
追いつめられた時の本性が
野犬か蛇か媚猿だって
腹で生きていればいいさ
腹から善人でないのなら
善人やるのも大変だ
「偽善者」とは呼びたくない
みんな必死で生きている
されど頭 胸 腹
生きる覚悟は腹

毎日瞑想で心を静めて
きれいな上澄みだけ見せられれば良いが
突然のシェイクに泥が巻き上がる
「畜生馬鹿野郎クソッタレ豚野郎」(動物バンザイ! )
またまたソウテイガイだって?
ソウテイナイでいいでしょうもう
腹がへったら食えばいい
腹が立ったら怒ればいい

わたしは平和主義者ではありません
戦争もケンカもしたくはないが
追いつめられた腹から何が飛び出すか
いや調子に乗った時こそ何が飛び出すやら
なってみないと解りません
わたしは主義などあてにしないのです
自分の主義にも他人の主義にも
何度も裏切られてきたもので

右の頬を打たれたら
左の頬を出す
そんなことは簡単
世の中上手に渡るため
誰もが似たり寄ったり経験済みだ
だけど理由もなくあなたの頬を打つ者を
あなたとあなたの愛する者に銃を撃つ者を
その悪意と理不尽さ
残虐さすらも心から
憐れんで赦すことができるなら
その時こそ名のればいいさ
わたしは平和を創る者だと



    《頭 胸 腹:2014年3月14日》


自由詩 頭 胸 腹 Copyright ただのみきや 2014-03-30 17:25:05
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