おさななじみ
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わたしは覚えている
あなたはわたしの詩をよんで
あなたはわたしの言葉をよんで
これがすきだと
はにかむように笑ってくれた

わたしは覚えている
あなたは太陽の下で
あなたは吹雪のなかで
少しつかれて
でもしかたないって顔して
笑ってくれた

それで十分でした
それだけでうれしかった
あなたのなかに
あなたの目線の上に
わたしは確かに存在していて
それを感じられるだけでよかった
なにも足したり加えたくはない
そのままでいい
あの頃には思いもつかなかった長い年月が
あのときの光景に上書きされていく
若かったあなたの笑顔が
いまのあなたに重ね塗りされていく
互いの手についた油絵具を
無邪気に腕にこすりつけて遊んだ
白い肌とあなたの浅黒い肌を
きれいに汚した赤い油絵具

できあがりを想像することのできない
現在進行形の大きな油絵を
互い違いに塗り重ねながら

  うつくしくできあがることはないとわかっていても止めることはできず

最初に描かれた下絵を忘れない
あなたの無邪気な線で描いた
あの頃のわたしとあなた
長い年月を重ねても
誰もがその結果しか見ない日が来たとしても



自由詩 おさななじみ Copyright bookofheaven 2014-03-30 11:21:16
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