桜/きっとそうするしかなかったのだろう
rabbitfighter
高戸橋から江戸川橋の間
神田川は桜に抱かれている
護岸に並んだ二百数十本の幹から
幾千の枝が
それらの枝はその幹の根よりも低く
深く
川面を抱きしめる
ビルとビルに挟まれた都心の川岸で
きっとそうするしかなかったのだろう
今日、花は八分咲きで
これから満開になりそして散る
流れる花びらを見ながらかつて思っていたことは
もう忘れた
今は
癒えることのない悲しみを知ってしまったから
神田川はやがて隅田川に注ぎ
全ての川と同じように海へと還る
あの海へと
散っていった花びらたちが
共に還るのか私は知らない
何れにせよ
きっとそうするしかなかったのだろう