桜の樹の下へ
小林螢太

夜明け
窓を開けると
空に明星が瞬いている

テーブルにこぼした煙草の灰を
手で掬いとっているうちに
夜が終わっていく

春先の
暖かい雨は降り止み
朝日が微かにひかる
神経が泡立つ



開け放れた窓
カーテンが揺れる先の
桜の花を眺める

花びらの散る音が聞こえる
薄紅いろの淡い
花の音
あるいは風の
うすい色

花吹雪であられた銀幕に
記憶のかけらが
幾つも散っていく



目のまえに手をかざす
仄白く
青いゆびさき

霞んでいく視界のなかに
幾つかのひかりをみる

いつの間にか、あたりは明るい
吹きこむ柔らかな風が
外へ誘う
春の淡い外気

足のうら
タイルの感触を踏みしめ
桜の樹の下へ







自由詩 桜の樹の下へ Copyright 小林螢太 2014-03-29 14:05:35
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