つまづきの歌
クナリ
つまづく者を 見守る者は
つまづくことで何かを 掴んで来た者たちだ
つまづかないよう 見守る者は
つまづく度に何かを 失って来た者たちだ
石造りの壁に つながれたなら
不貞腐れてる間に 君の足から
からたちのような 根が生えるだろう
その根の先でたどるのだろう
あの優しかった人々の声を
同じ形でなぞりながら
うつ伏せる者を 見守る者は
遥か高みを睨み 起き上がって来た者たちだ
うつ伏せる者と 手をつなぐのは
土を噛む苦さに 泣いて来た者たちだ
あの誰もいない町で 誰もが待っている
それぞれの優しさで 強かな振りで
木漏れ日の形の指は 届くのだろう
あの優しかった人々の声を
同じ形でなぞりながら
(あなたが膝を折ったとき
傘を差し
濡れた靴で
待っていた人たちがいたでしょう!)
つまづく者を 見守る君を
つまづかないよう 見守る僕は
うつ伏せる者を 見守る君を
うつ伏せたまま 見守る僕は
誰もいなくなった町で
ようやく会える人々へ
我が身を焦がし
指先に火を灯し
石造りの壁を照らし
影の数を数えて
枷は地に落ち
歩き出したら
つまづきつまづき
土を噛み噛み
不意に仰向いて
あの優しかった声を
土と空から
なお
聞く
ここは
あの人たちと
歩いた道の上。