東京女
中山 マキ
会いたい人がいるはずなのに
会わなくても生きていけて
なんとなく煩わしさを感じてしまって
地方から東京に出てきて
祖母とも叔父とも疎遠になっている
わたしは健康で、仕事もしていて、
お金もそれなりにあって
同じ血が巡る人々には会っておくべきなのに
忙しいという理由にもならない理由をぶら下げて
阿佐ヶ谷でお酒を飲んで
だらしなく笑っている
本当の意味で後悔するのは
祖母や叔父と同じ年齢になった時かな
そのころにはもう二人はいないはずだけど
わたしが死ぬときに一人きりでも
だれにも文句は言えやしない
優しくないわたしには優しくないことをされる
それを因果応報という
それでも、まだ生きているから
会おうと思えばいつでも会えるから
理由にもならない理由を覚悟もないまま
ぶら下げているのだ