いとおしい 石
るるりら
【いとおしい 石】
真新しい制服をきて
さあ これから はじまりますよという玄関で
籠の鳥が けたたましくないていたから 鳥にも
ありがとう 入学してくるねって 声をかけ
ただいま って帰ってきたら
鳴かない鳥が
小石のような卵を たくさん抱いたまま瞼を閉じていた
鳥の おかあさんの死を
鳥の おとうさんは いくら叫んでも
だれにも届かず
どんなに泣いても
生き返らなかったのだね
かなし い じゃなくて 紺色の服を着て嗤っていたよ
啄木(きつつき)となのった人がね、
悲哀以外の意味で「かなし」を使っていたんだってよ
古文では、古文ではさあ「可愛い」とか「いとしい」も かなし い って いうて聞いてきいたよ
だきしめた こいしがる こいし に なくした声
あの日の制服の まあたらしさが ひるがえる