ホテル ハット・ウォールデン
鵜飼千代子






はじめて宿泊した日は
洗いざらしのシャツとジーンズで
いつ帰るか予定のないひとり旅だった
大きなリュックを背負い
フロントまでの階段を登った



しばらくして
宅急便で荷物をホテルに送っていて
部屋までバッグを運んでくれたフロントに
届いている荷物を伝えられたあと
その段ボールにお土産を仕込んでいたのか、
いつもの癖で
爪で段ボールのガムテープを開けようとした

「ルームキーを貸していただけますか?爪が痛みます。」

言われるままにルームキーを渡して
手元を見ていた

段ボールは開いて用事は済んで、
フロントマンは部屋を出ていった



ホテルの窓辺が大好きなので
窓の外を見ながら
両手のひらをじっと見る

ネイルアートなどする隙のない
生活の手だ



「お夕食のお時間です。」

フロントから電話が来るまで
至福の時の窓際族を楽しむ
背中には安心がある

レストラン ネストに行ったら
あらかじめ
「半分にしてください」と
お願いしていた
楽しみのディナーをいただくのだ

「食べ残す」ことへの恐怖を受け入れてくれた
レストラン ネストで



ハット・ウォールデンの階段を駆け上がり
「ただいま〜」と
チェックインするのがとても好きだった

こころはいつも この窓辺に戻る







携帯写真+詩 ホテル ハット・ウォールデン Copyright 鵜飼千代子 2014-03-25 00:06:01
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