はじめて宿泊した日は
洗いざらしのシャツとジーンズで
いつ帰るか予定のないひとり旅だった
大きなリュックを背負い
フロントまでの階段を登った
*
しばらくして
宅急便で荷物をホテルに送っていて
部屋までバッグを運んでくれたフロントに
届いている荷物を伝えられたあと
その段ボールにお土産を仕込んでいたのか、
いつもの癖で
爪で段ボールのガムテープを開けようとした
「ルームキーを貸していただけますか?爪が痛みます。」
言われるままにルームキーを渡して
手元を見ていた
段ボールは開いて用事は済んで、
フロントマンは部屋を出ていった
*
ホテルの窓辺が大好きなので
窓の外を見ながら
両手のひらをじっと見る
ネイルアートなどする隙のない
生活の手だ
*
「お夕食のお時間です。」
フロントから電話が来るまで
至福の時の窓際族を楽しむ
背中には安心がある
レストラン ネストに行ったら
あらかじめ
「半分にしてください」と
お願いしていた
楽しみのディナーをいただくのだ
「食べ残す」ことへの恐怖を受け入れてくれた
レストラン ネストで
*
ハット・ウォールデンの階段を駆け上がり
「ただいま〜」と
チェックインするのがとても好きだった
こころはいつも この窓辺に戻る