死の手 など六編
クナリ
<死の手>
足の先から順に触れてください
のどを最後にして欲しいから
最後に呼びたい名前が
あるものですから
あなたもそうで
あるように
あなたもそうで
ありますように。
<百年ルール>
あなたが落としたものを、私は拾って食べますよ
いえ、まあ、床の状態にもよりますけども
あと五十年くらいしても、変わらずそうでしょうよ
雲の上でも、そうでしょうよ。
<純愛>
足も、
尾も、翼も、
目も、耳も、くちばしも、
奪い去って、失くし尽くして、
鳥ではなくなった鳥の身のうちに、
なお残るような愛情しか求めない
君だけはそれを
純愛と呼んで呉れ
どうか君だけは
純愛と呼んで呉れ
どうか純愛と呼んで呉れ
どうか純愛と呼んで呉れ。
<異常者>
私のことが好きだなんて、あんたどっかおかしいんじゃないの。
<紙飛行機>
紙飛行機に乗りたいよね
壊れそうなほどいいよね
墜落した草原で
墜落したねって笑い合おうね
そして丘の上へ駆け上がって
ひとつも懲りずに
また紙飛行機に乗りたいよね
奇跡のような
われわれだったね。
<似たもの同士の不理解に似た理解>
それ、何?
また、いらないもの?