春分に
凍湖(とおこ)

はるが来た。
決して、ただ暦のことだけじゃなく。

よのなかが、はるだ、はるだ、と騒ぎ
書店に「新生活特集」の見出し跳ね
アパレルがパステルカラーに染まり
けれど、相変わらず
わたしは黒いコートで
さむいなぁ、と俯いて
なんとなく、季節は遠く。

ああ、でも
はるが来たよ。
さっき、砂利道に、すみれを見つけたときに。

来た。
びょうびょうとかぜが吹き
湿った匂いが、鼻腔に満ち。
そわそわ、酔ったように落ち着かない
はるが。


自由詩 春分に Copyright 凍湖(とおこ) 2014-03-21 09:51:07
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