終わらぬ歌の序章として
千波 一也


流れ星のような、
一瞬にしかわかり合えない
出会いのない命であるので
皆、慎ましくて尊ばれる命であるので
願いよ叶え、と
願い合いたいものです

つかの間の、
行きずりの間柄ならば
ほんの少しだけだとしても
気遣えます
本来、人間はそういうふうにして
ゆずり合って
たより合って
たすけ合って
こうして繁栄を遂げたわけですから
やさしい生き物のはずです
寂しがり屋で
傷みやすい、
なまもののはずです
だから、
流れ星を見つけては
そっと願いを込めるような
奥ゆかしくて
控えめな
一生懸命な命なのだと思います

諦めではないけれど
知ったつもりでもないけれど
生まれたからには
必ず息絶える日が来るわけです
だれにも平等に
さようなら、と
お別れをする日が来るわけです
出会うは別れの始めなら
最期の自分がどうありたいか、
それは難しくなりようのない
至極めぐまれた命題なのだと
信じ合いたいものだ、と
ようやく気がつけました

ありがとう、そこに居てくれて
ありがとう、ここに居させてくれて

もう二度と顔を合わせることのない
はかない一期一会だとしても
わたしはあなたを忘れません
忘れられるはずもありません
何故なら
あなたがわたしの命の証だからです
寂しい日々は
あたたかい日々と必ず交互に訪れるのでしょう
途に迷ってしまったときは
どうか、
あなたはあなたのままで
わたしを許してくださいますように
わたしが
あなたのささやかな流れ星で在れますように
偽りなく
願い続けることでしょう

けっして容易なことではありません
けれど、
それゆえにこそ、
弱い種族ゆえにこそ、
もろさを克服するために得た知恵と習慣、歴史のもろもろを
贅沢に消費してしまうような
哀しさを背負うことだけは避けなければと
のぞんでいます

ひとり、でなくて良かった
こころから
救われてなんぼの暮らしで良かった

面と向かって
そう何度も言えることではないけれど
愛して止みません
あなたと
あなたによって守られるわたしと
あなたの為に尽くせることを求めるわたしと
愛して止みません

消えるべくして消えたとしても
あらたに生まれる法則が
そのはかなさをなぐさめます
だから、
死ぬまで
うたいつづけます
消えてゆくのだから、
どうせ消えてゆくのだから、
考えたって始まりません
皆で
うたいましょうね
うたを聴いた赤子が
やがて己が身に赤子を抱えたとき
ごく自然に
ごくありふれた
なんの疑問もなく踏襲する
子守唄のように
引き継がれてゆく営みを
ふたつ持たせて頂いた手によって
ふたつも持たせて頂いた足によって
ひとつとはいえ持たせて頂いた口によって
ひとつの重みを十分に持たせて頂いたこころによって
至らぬなりに
至らなさをわかり合って
流れ星に
代わりばんこに
思い出し合えたら素敵です
実現可能な素敵です

宜しくどうぞ
お達者で
お変わりありませんか
ご機嫌よう

どれも
まったく必要なうたですね
一度は逆らう時代もあるのでしょうが
やっぱりいつか
ひれ伏すのでしょう
人間は逆らえません
容易には
人間の幸福に逆らえません
よく出来た未熟さです
充実した果実です

またお会いしましょうね
来世でも
明日でも
原始でも
昨夜でも
思いのままに
すれ違いあって
こころを擦り合って
どうしようもなく小さな
あまりに小さな
祝福を
身にあまる架空に誘われるまま
奇跡、と呼んでいたいのです









自由詩 終わらぬ歌の序章として Copyright 千波 一也 2014-03-20 23:58:48
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