土手を歩く
オイタル

今日は土手を歩く
土手を歩いて風を数える
おまえと 僕と
懐かしい春の風を行進する

川面の丸い光を
後退する四角い針の葉の林を
居眠りする土手の潅木の列を
風はまんべんなく揺らして渡る
三角の風の先端に
くるくるまわる紙の戦闘機
それと 幻の校舎

プラタナスの青空を越えて
ボールが飛ぶ

木の階段をうるさく踏み鳴らして
登った角の僕らの教室
黒光る手すりにもたれて下を覗くと
先生のハゲ頭がギシギシと
踊り場を巡って
記憶の渦に消えた

気づいてたかい あの窓から
おまえの笛を放り投げたんだ あのとき
教室に忘れた縦笛
クリーム色の胴体が
地面にあたって乾いた細い音を立てた

僕らは訓練の足りない兵隊のように
土手を滑り落ちる
細道は日差しを拒み
湿った羊歯の葉先を
喉元につきつける

そうして 今日
僕らは土手の根を歩く
土手に沿いながら
風の重さを両手で計る

指も鳴らせ
ひときわ高い二本の杉の梢の上に
さらに高く
聞き慣れた 春のラッパが鳴る


自由詩 土手を歩く Copyright オイタル 2014-03-19 20:39:00
notebook Home