RUN THE HAZARD
一 二

オートバイの神様よ
僕にオートバイを運転するだけの
必要最低限の才能しか恵んでくれなくて
ありがとう

レーサーになる腕前も
白バイ警官になる技術もなく
暇さえあれば峠に繰り出し
運が悪ければ
アスファルトの染みになってしまうような
おっかなびっくりな休日を作ってくれてありがとう

途中の道の駅にての
タバコとジュースとソフトクリームの
最高のピットインをくれてありがとう


もう僕たちはゆとりを持って道を走ることは
出来なくなった

道を行き違う共犯者にサインを送り
同じ道を走る共犯者とバトルをする

マシンの性能を自分の腕だと思い込み
乗ってるつもりが乗せられて
無軌道なバトルをする

そこに勝者はいない
それに栄光はない
貰えるものは赤キップ
もしくは火葬証明書
ただそれだけだ

その馬鹿馬鹿しさに気付いて
自ら降りる者
馬鹿馬鹿しさに気付けずに
強制的に降ろされる者
様々な人達が
挑んでは挫折していった

自転車の時がそうであったように
エアガンの時がそうであったように
危険な玩具は
男のマストアイテムであり
男の身を滅ぼす

子供の日の憧れを忘れず
子供の日の己に嘘を付かず
煩悩に手と足が生えて
今日も世界のどこかで
マシンに股がる男たち

誰かがオートバイは「キリン」だと例えた
「ライオン」という名の車に勝てない
剥き出しの未熟さ

いつまでの若い心でいようと
若い心で年をとろうと思った男たちは
身も心も若いままで死んでしまった

生き残った者たちよ
いつか死ぬなら
今日で死ぬ覚悟で


自由詩 RUN THE HAZARD Copyright 一 二 2014-03-19 18:35:13
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