蟄虫啓戸
nonya


蟄虫啓戸
すごもりのむしとをひらく


ギィっと
闇に穴が開くと
部屋は一瞬で眩しさに満たされた

クラっと
意識が旋回して
しばらく身動きが出来なかった

何の理由も告げずに
君が出て行ってから
開けたことがなかった扉

開けさせたのは
僕の意志ではなく
身体の真ん中でのた打ち回る
何かだった

オズオズと
眩しさの中へ這い出すと
煩いほどの匂いが方向を失わせた

ゴソゴソと
闇雲に動き回っていたら
心地良い何かが背中を撫でていった

キイキイと
なんとなく危険を感じる振動が
遠くから伝わってくるから
慌てて乾いた何かの下に身を隠した

ここには生きることの
喜びと恐れがすべてある
君が出て行った理由が
ほんの少し分かったような気がした

ようやく落ち着いたところで
無性に腹がへっていることに気がついて
手当たり次第に辺りの何かを食んだ

美味い

美味すぎて
左の4番目の足がつりそうになった




自由詩 蟄虫啓戸 Copyright nonya 2014-03-18 22:04:25
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