二千十四年三月十一日に
夏美かをる

生と死、幸と不幸を分ける境界線の
なんと曖昧なことか
一体彼らが何をしたというのだ?
彼らと私の違いなど何もないではないか

奪われた二万千五百十名もの尊い命
決して癒えきれぬ悲しみを不意に背負わされた遺族達
三年を経て未だ避難生活を続けている二十六万七千もの人々

一体彼らは何を怨めばいいのか?
己の運命か?
黒い悪魔と化した海か?
それとも
突如暴れ出した地球か?

あの日以来
揺さぶられ続けている私達の魂
フッコウというプロパガンダが吹き止まぬ中
学者達が尚も冷静にはじき出したおぞましいデータ

次のミゾウに備えるためのヨチ
ナンカイトラフジシンが起こる確率
三十年以内に七十%
シシャのカズのヨソク…
私の脳が受け止められない数字

なんということだ!
地球が呼吸を続ける限り
私達を許すことはないのか?

慌てた様子で
ボウサイ、ボウサイと叫びながら
小さな袋にありったけを詰め込んでみたりする
これで命が助かるのか?
大切な人の命を本当に助けられるのか?
けれど他に何ができる?
逃れ住む場所など どこにもないではないか!

揺れる大地に生まれ堕ちてしまった私達は
一体何を怨めばいい?
天の沼矛を振りかざして
我が国の礎をその場に誕生させた
イザナギノミコトか?
矛の先から滴る一滴を
その場に導いた悪戯な運命か?

いつ突然崩れるとも知らない
うすっぺらな幸せの上に
大切なもの全てを託すしか術はないというのに
私達はどう生きればいいのか?
一体どう?

何一つ答えは見つからないというのに
二千十四年三月十一日という日もまた
つつがなく私の前から流れ去ろうとしている
健やかな寝息を立てる娘の頬をそっとなでながら
あの日からも私が
ただつつがなく生きていることの
免罪符を淡い闇の中に探し求める

そう、無責任で気まぐれな地球という生き物にとってみたら
甚大な試練を与える対象は
彼らであっても 
私と私の家族であっても
何ら違いはなかったのだから


自由詩 二千十四年三月十一日に Copyright 夏美かをる 2014-03-15 12:14:17
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