糟糠の妻
山部 佳

きみが霜の降りた髪に
はらりと留まる薄紅の色に酔う

積もった時間は
古い層から固まりゆく
春を迎える度に
漆のように重ねてきた

嵐が吹き荒れた季節
その黒髪の一本まで
この手の中にと願った

穏やかな微風の季節
満ち足りた瞳の光に
ささやかな矜持を得た

春色濃く川を染め
舞いそびれた花は
か細い枝に揺蕩う
流れ行く先も見えず

霞み重なる山々の
うねりは果てて
白い空に溶ける
その向こうまで このままで

春は行く
青い夜に白い炎を揺らせて
見送るきみの無邪気な瞳に
酒杯を向ける

ここに今 ともに在ることを
誰に感謝しようか


自由詩 糟糠の妻 Copyright 山部 佳 2014-03-14 21:39:53
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