糟糠の妻
山部 佳
きみが霜の降りた髪に
はらりと留まる薄紅の色に酔う
積もった時間は
古い層から固まりゆく
春を迎える度に
漆のように重ねてきた
嵐が吹き荒れた季節
その黒髪の一本まで
この手の中にと願った
穏やかな微風の季節
満ち足りた瞳の光に
ささやかな矜持を得た
春色濃く川を染め
舞いそびれた花は
か細い枝に揺蕩う
流れ行く先も見えず
霞み重なる山々の
うねりは果てて
白い空に溶ける
その向こうまで このままで
春は行く
青い夜に白い炎を揺らせて
見送るきみの無邪気な瞳に
酒杯を向ける
ここに今 ともに在ることを
誰に感謝しようか