TV boy
藤原絵理子

なにかに取りつかれたように
テレビの画面を見つめつづけて
何も伝わってこない低級な映像を
ハンストみたいな気持ちで眺める

罰を受けているのかも知れない
ふとそんな気にさせる巧妙な仕組み
懺悔するつもりなんかない
懺悔する内容さえも…ない

ささやかな休止
ノイズだけが見えて聞こえる
それでもさっきまでの番組よりは
まし

空が白んでくる
急速に奥行きを失くす街の風景
平板なやさしさを撒き散らす風景
一人前の凡人だと勘違いさせる

ヒゲを剃って
スーツを着込めば
街や人を騙せる
次に騙すのは自分

ぼくの孤独は
毎日毎日螺旋を描いて上昇する
夜になればまた意味のない映像が
閉塞した孤独を確認させようとする

抗うポーズを取りながら
結局確認作業に付き合ってしまう
そのほうがしあわせかも知れないと
言い訳してハンストをする

そして
すこしずつ
大切なものを
失っていく


自由詩 TV boy Copyright 藤原絵理子 2014-03-12 22:08:52
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