最後のパンケーキ
もっぷ

さざなみに心を許して
軽い手荷物すらもういらない
石の原野に泉をみつけた
だから
もう何もいらない
青い花たちが
みえない風に踊っている
啜り泣きは石っころたちの
いつもの癖
地図を燃やして火を熾し
お昼の準備
最後のごはんはパンケーキ
泉の水を少し戴き
喉を潤おしながらパンケーキ
風がにおいを運んで
泉は何かを言いたそう
もう明らめられているから
すべてに耳を傾けよう
ふとポッケにはまだ
くちゃくちゃの往復切符の
残り半分があったことに
気がついて
傍らの手荷物とともに
忘れ去ることにする
きみ、
と呼びかけてきた
たくさんのきみたちが
よぎるなか
目を瞑り
さざなみにだけ心を許して
お昼のごはんを終える
青い花たちが泣き虫の石っころたちに
うたを教えている
わたしの知らない言葉
心を許しても
さざなみの気持ちの断片すら
読むことができない
わたしは人間
厭われて街を出て
石の原野にたどり着いた
パンケーキを食べたばかりの
わたしはまだよそもの
どんなにさざなみに寄り添っても
骨になるまでは信じてもらえないらしい
青い花たちがみえない風に踊っている




自由詩 最後のパンケーキ Copyright もっぷ 2014-03-12 08:02:21
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