在庫
千波 一也




わたしの辿った
春を数えていただけの、
それだけで、よかったはずの
とおい春


わたしには
あとどれくらいの春がめぐるのだろう、と
なにげなく指を折り、数え始めた
そう隔たらない春


わたしの命には限りがあるから
春の残りにも限りがあるけれど
在庫を残したまま、ぷつりときえる
そんな運命がわたしを飲み込むかも知れない


在庫など、
あっても無くても同じことだろうか
そんなことは考えずに生きたほうが
幸せだろうか


前を向いて、未来を切り開いて、とか
過去は捨てずに、しっかり抱いて、とか
わかる、けれど、どれも確かにそうだけれど
少しずつ、はぐれてしまっている気がして


何がおきてもいいように
こころを決めて臨む春
でも、この至らなさを立ち直らせる
やさしい階段のような春もほしい


だれか知っているのだろうか
在庫の確かめようを、
あるいは確かめなくても
こころやすらかに暮らせるすべを









自由詩 在庫 Copyright 千波 一也 2014-03-11 12:20:06
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