宝石商
千波 一也



碧い鉱石を
もう、ずっとながいこと
求めつづけて
彼は

自分が
空に渡っていった
海であることを
憶えていない







夕日の熱は
裏切りという罪を燃やすのに
都合がいいから

だまってみてる

誰もみな
紅く凝り固まって







圧倒的な氷は
つややかな黒色らしい

そういえば

夜空の星は
黒鍵を弾けばこその
美であったかもしれない







とうめいな国に
等級という制度が築かれてから

ことばは難しくなった

それゆえ罰にさえ
透明度がある







橙色がつらなると
なつかしさは熟して香る

窓辺に憩う
いのちの浅瀬の豊穣が
つがいのはじまり

羽もつすべての







灰は
おそろしくない

何の前触れもなく
灰と呼ばれる日が来るとしたら
それは真実おそろしい







往くものと
還るものとが交わって
紫になる

紫は、高貴で禁忌な色であるから

薬になれる
毒にもなれる







しろい影になりたくて
なれなくて

しあわせな言葉がひかりに、向かう

お迎えは
こころと裏腹なのだと







緑の大地は
なにいろの血を流すのか

知りたければ

おまえの小指を
ナイフでなぞればいい

深い海の底で生きるのが
おまえでなければ







金脈を
めざした
夢にも満たない時間の
ひとつぶたち、は

もう
まぶしくて顔がみえない
だけど、かならず
笑んでいる














自由詩 宝石商 Copyright 千波 一也 2014-03-10 10:16:10
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