ベイビーベイビーベイビー
末下りょう
安物のターンテーブルでまわる
ストーンズのLP,BPM,ベイビー
ささくれた爪の付け根みたいなきみのニンマリ,
スクリームを泡立てた
コーヒーの湯気の効果線は
走る稲光
四角い地球の角を過ぎ去る下着姿のきみは
余白を描き、それに触れた
観葉植物の葉脈は
冴える
ビートとシャウトを聴き流すふりをして
熱いカフェイン、
口に含み
窓に、手垢
中古車屋の看板にとまる
鳩
きみが食べ残した、歯がたが残るトーストのジャムに
朝日が巻き込まれて
ベイビー、
終末は
近い
キッチンで
砂糖を探す
きみに手を振る
何かがあるならたくさんがあるからだ
ピックか、アンダーヘアーか
つけ爪か、隕石か
ピルか、電子レンジか
それとも愛か
知らないどこかでケンカした2人が交わすくちづけも
同じハッピーを求めれば
もう目的じゃない
ベイビー
愛だ、愛を知らないなら愛し合えるぜ
ベイビー
愛は愛に満たされたきみの燃えカスにも満たないぜ
ベイビー
たとえ砕かれた愛も
その愛の破片を胸に抱いて生きようとしたなら
そこにはありあまる愛があるぜ
ベイビー
過去か未来にしか声は存在しないなんて
真っ赤なウソさ
きこえるだろ
愛の叫びが
美しすぎて美しくない言葉は
どんな楽器も鳴らさない
破れたノイズだ
また悪口を言い合おうぜ
ベイビー
時間の片隅によどんだウソや理想
1箱のタバコの行方
気のぬけた缶ビールの底に
あるはずの静けさやら
沈むべき夜のカケラを
トイレに流した朝のこと
お互い責め合って
忘れたように
抱き合おうぜ
こっちにおいでよ
生まれて死ぬまで間違い続けるのさ
風に揺れるカーテンや
きみの笑顔を
テーブルクロスのしみに
ふれながら
眺められれば
それで
文句はない
銀河のいかれたレコードの溝を
軽いステップで
滑って、まわり
見つめ合って
何度でも
愛し合おうぜ
ベイビー
ベイビー、ベイビー