トカゲ
藤原絵理子

シッポを切って逃げる
簡単…でも必死

自発的な変化
エントロピーは常に増大する
生き延びるのだから場合の数は増える…
当たり前のこと

こわい夢/現実から
すんでのところで逃げ出せた安心感
おいてきたシッポを思うくらいの
想像力は残っているから

結晶になれたら
静かなこころもちでいられる
絶対零度まで冷やしてくれれば
シッポのことなんか考えなくてもいられる

どうせなら
えりまきをつけて
うしろあし2本で逃げたかったな…
シッポを切るなんてことしないで

一生に何本シッポを切るんだろう
そのたびに未来の分岐点が増える
自由度ばかりが増える
バランスを取るのが難しくなる

あ 弱ったハエ…
今日のために捕まえなきゃ

夢見る永遠は
着実な今日の積み重ね…これも自明の理
それを見失うから
シッポを切るはめに陥る

できるだけ
完全な結晶になって
余計なことは考えないようにしよう
こんなことも考えないように

あたしが切ったシッポは
バタバタ暴れてから動かなくなる


自由詩 トカゲ Copyright 藤原絵理子 2014-03-08 21:23:40
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