あなたのオルゴール
藤鈴呼




あなたの手を ゆっくりと取り
「あたたかいですね」 と 声をかけた

あなたは 
ゆっくりと にっこりと 笑って

いえ、それは 褒め言葉では 有りませんよと 
ピシャリ。

真夏の逃げ水みたいに 具体性の無い雲が
どんどんと流れて
今朝は寒気が 雪崩れ込んだから

あなたの感情も のらり・くらり
百八十度 回転 したのかもね

その頃には 開店準備も整って
いつもの朝の 挨拶代わりに
素敵なオルゴール 流れ 始めた

曲が響く 店内ならば
笑顔も 零れた ことだろう

違うんだ

本当に 「オルゴール」が 
流れ始めてしまったから 
大騒動

「どうしたんだ?!」の 
オン・パレード

本来ならば 
スポット・ライトを 浴びているのは
僕の方だった筈なのに

ステージの袖で 
唇噛んで

それでも足らず 
袖と靴を潰したモンだから

革靴が スリッパ状になったまま 
元には戻らない

マイクロマクラメコードはね 
縛り過ぎるとダメなんだ

ほんわか ほんのり 香る位が丁度良い
パフュームと 一緒なんです

あんまり 気持ちのままに にぎにぎしすぎると
窮屈に 縛り上げられて 根を上げてしまうから

その直前で 可愛がって あげましょうね


自由詩 あなたのオルゴール Copyright 藤鈴呼 2014-03-08 18:59:58
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