蒲生万寿

蟻は象に問うた

「おまえは大きいが、何が出来る?」

象は答えた

「食うこと以外、何も出来ない」

蟻は言った

「おれは小さいが、おまえと同じだ。食うこと以外、何も出来ない」



月は太陽に問うた

「おまえは何をしているのだ?」

太陽は答えた

「昼間を照らしている」

月は言った

「おれは夜を照らしている。同じようなもんだ」



人は山に問うた

「おまえは何なのだ?」

山は答えた

「何でもない。ここに居座り、移り変わりを捉えているのだ」

人は言った

「私はおまえとは違う。居座ることも出来ず、あらゆる物事に翻弄されている。生き物としても、日月の動きの早さをとっても、流され流され、絶えず急かされている」

山は言った

「急かされているのではない。おまえが勝手に急いでいるのだ。おまえの世界だけでのことだ。おまえと私は、それほど違わない。同じようなものだ」

人は言った

「同じようなものなのか?」



蟻と象は言った

「同じだ」



月と太陽は言った

「全て同じだ」



山は言った

「おまえ次第だ」
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自由詩Copyright 蒲生万寿 2014-03-08 16:50:01
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