縫製を生業とした男とその解体
こうだたけみ
身体畳む。折り畳み式自転車さながらに、輸出品に紛れて大海原を渡る。船中、積み荷のひとやま数え終わらぬうちに異国の風が吹き荒れて、長い記憶の隙間を縫い合わしていく手元が狂う。皆が止めるのを振り切って単身船を降り、直立姿勢を保ったまま、宣伝用等身大パネルさながらに重さを感じさせず、真正面から倒れ落ち込む。
岬。先端。
眼前に岩壁を舐めるようにして海の藻屑となって、俺ひとり数え終わらずに、皆針のように尖る。帰郷する船は迎えには来たのだが、一向に覚めやらず、もう一度かの地を踏むなどあり得ないと、左右に首を振ってみせるのも賢さのうちか。けれど今でも想われるのは、遠く水平線上に消えゆく橙の様。今も想われるのは、激動の在りし昔。
嗚呼、こうもばらばらになっては、取り返しのつく筈もなく。