冷たい雨
nonya
雨を轢く車の音が
電話の呼び出し音の行間に
打ち寄せてくる
湿り気を帯びたルーチンワークは
未だ真綿に包まれた意識の中
縋りつくように盗み見る
スマホには温度の無い文字列と
笑えないスタンプ
窓の外に見えるはずの
雨雲に拉致さらた電波塔は
こんな日にも生真面目に仕事をこなす
昼休みまであと30分
買い置きのカップ麺をすする自分の姿が
電話の呼び出し音の行間に
打ち上げられて嫌になる
外は冷たい雨
情け容赦ない季節の足踏み
新しい季節はまだ
百貨店のディスプレイの向こう側で
パステルカラーの洋服を着せられて
うらめしげに空を見上げていることだろう