1号車の思いなし
ichirou
1号車に乗っているあなたを
僕は追いかけることができなかった
すぐにホームは終わって
ホームの端っこで呆然と見送るしかなかった
もしあなたが16号車に乗っていたら
息が切れて走れなくなるまで
追いかけることができただろうに
1号車に乗ったあなたは見えなくなって
僕にとって必要のない何百人もの他人の無関心だけが
僕の目の前にまき散らされた
ホームの端の柵を握りしめ
線路の行く先を見つめる男がいた
最後尾の加速する車窓から見た男の顔の残像が
カーブの先に見えた先頭車両に映っていた
男はきっと泣いていただろうが
残像の中で男の涙は雨に変わっていた