さまよう息吹
千波 一也



シロクマの
故郷と隔たるところに
わたしは住んで
いて

シロクマの故郷と
隔たらぬところに
わたしは住んで
いる



ニホンオオカミが
絶えてしまった時代に
わたしは生きて
いて

ニホンオオカミが
今なお咆哮をあげる時代に
わたしは生きて
いる



目の前には展開されない
インドクジャクの
壮麗な羽

時々不意に
目の前に広がる
インドクジャクの輪舞



おそらく
死ぬまで乗ることのない
アミメキリンの長い首

おそらく
死ぬまで乗り続けるつもりの
アミメキリンの高い首



シマフクロウの
ひそかな息づかいを
わたしはそっと遠くから
信じるしかなくて

シマフクロウの
にぎやかな宴のなかに
わたしは夜な夜な
誘われている



サンゴの
無垢なる無言の悲鳴に
すべなく傷むのが
わたしの暮らし


サンゴの
勢い豊かな色彩御殿を
懸念なく泳ぎまわる
悠々自適さも
わたしの
暮らし



あなたは
どこで声を発していますか

あなたはどこで
途絶えていましたか










自由詩 さまよう息吹 Copyright 千波 一也 2014-03-04 18:01:52
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