無理な話
千波 一也


ことわりの無いさま、を
無理と言うのであろうから
なるほどなかなか高尚な言葉である

無理、とは奥深い言葉である

茶髪のギャルらが言う
(時には単体で)
無理、ときっぱり
無〜理〜、と伸ばし気味に
え〜、と迷った感じを装いながら
結局は無理、とやや無慈悲に

生意気ざかりのにーちゃんも言う
はにかんで言う
さわやかに言う
ぶっきらぼうに言う
真顔で言う

ところで
彼女ら、彼らは
何について
どんな事物や
どんな事象について
ことわり無し、と見解を示すのか

それは
顔立ち、見た目、服装

それは
仕事、勤勉、頼まれごと

それは
性格、気質、趣味、娯楽

無理、という概念の
適用範囲はすこぶる広い

そして
その叡智は脈々と
この和の国に受け継がれようとしている

見よ、園児らを
見よ、小中学生を
見よ、ご高齢なる賢人たちを

まるで空気のように
ごくごくふつーに、
無理という精神を
取り入れながら暮らしているではないか

技巧もなく
嫌味もなく
なんと無理のない無理であろうか

お、も、て、な、し、
或いは
季節を感じる健康美食
或いは
富士、知床、白神山地
それらに並ぶ
我が国固有の文化として
財産として
誇りとして
無理、が日の目を見るだろう








自由詩 無理な話 Copyright 千波 一也 2014-03-03 10:38:51
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