街灯の下 など六篇
クナリ
■街灯の下■
ずっとそこにいたのですか
ずっと一人でいたのですか
私は何度
あなたを通り過ぎてきたのですか。
■氷■
私の中には氷があって
子供のころからずっとあって
ずっと解かしてしまいたいと思っていたのだけど
私には解かすことがどうしてもできなくって
ただ一人解かすことのできるあなたに会えたので
できればこれからなるべく長い時間
隣にいてはもらえないでしょうか。
■恥知らず■
身動きできない女に
何をしようとしているのですか
そんな恥知らずとは思いませんでした
私ですか?
あなたと向かい合っていると
なぜか身動きもできないのですが
それがどうかしたのですか。
■自分の別人■
君といると僕の知らない僕が
いくつもいくつも現れてきて
混乱と失敗を繰り返してはどこかへ去っていく
まったく自分の制御を失うのは
面白くもあることは認めるんだけど
なぜか君といる時に突発的に現れてくる自分というのは
どうも大概 嫌なやつばかりで
君にそんな僕を見られて
これが本当の僕だと思われているのではないかと思うと
ひやひやする
僕が見ている君はいつも
いいやつばかりなものだから
君ももしかしたら怯えているのだろうか
僕のそれとは違うタイプの
本当の自分の別人に。
■病床■
私にできることは何ですか
私にして欲しくないことは何ですか
ええ、いいですよ
それはどうということのないものです。
なんだってどうということのないものです
私にできることは、何なのですか。
■会えない理由■
君に会いに行くのは大変なんだ
君に来てもらうのは恐れ多いんだ。