回帰
由木名緒美

あなたの眼差しを入り口にして抱かれる
薄青色の抱擁はとても温かい
奥へと進めば進むほど
現世は力強い鼓動の音に打ち消され
忘我の境地へと潜り込む

何も食べず、何も必要としなくていい
あなたの心臓にぴたりと寄り添い
胎児のように身を丸めれば
神の愛という幻の概念が
従順な依存心を貪欲に食べ尽くしていく
外界は一切のお喋りをやめ
息を殺して夜明けの一波を待つ

微震をあやす揺り籠は
小さなうねりを伴って、私の重みを降下させはじめた
吐き出される世界をあらかじめ予知していたかのように
私は母神の連なりを回帰していく
守られつつ、また養分を吸い上げる寄宿者でもあったあなたと
互いの必然を備えて別れるのだ

裸を撫でる風は冷たいだろう
見渡しても、あなたの足跡はすでに無く、
ただ幼い言語と声帯で
遠のいた人々の名を呼ぼう

それはいつか、こだまのようにこの胸に返ってくる
破り捨てた偽りの証が空に煽られ発火する
一つの生成を終え、微笑みは苦痛の先導者となり
あの幕を上げれば変わらない命がの灯が奉ってあるのか
いやはての祈りに、瞼を下ろした


自由詩 回帰 Copyright 由木名緒美 2014-03-01 00:42:04
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