歴史の礫
ただのみきや

死語の道徳を囀る一羽の小鳥が
超高層ビルからヒラリと飛んだ
喪失した記憶 飛び方を思い出すための荒療治
ところが思い出したのは
自分が本当は魚だったということ
《しまった早まった! 》
だがもう手遅れだ
どんどん速度は増して行き
だんだん魚は夢心地
モノ凄いスピードで墜ちているのか
それとも天空へ打ち上げられているのか
どんどん恐れが遠のいて
だんだん気持ちが大きくなって
なにせ超高層ビル
落下時間もずい分あるようで
やがて鱗が剥がれ落ちキラキラと尾を引いて
真昼の空を駆け抜ける彗星のよう
そのうち空気の摩擦で発火して
暗い世を照らす小太陽の心持になり
地面に近づくにつれて
人々は気が付きそれぞれに
「……鳥だ! 」
「いや 飛行機だ! 」
「違う魚だ! 」
「ミサイルだ! 」
「うああ恐怖の大王だ! 」
声を上げたが いよいよ近づくと
皆 それが誰かを見定めた
「……首相? 」
「えっ……総理…… 」
「総理大臣! 」
 
――飛来!
 ウツクシイサンパイノクニ
  セメルベキモノハセメチャウ
   マモルベキモノモセメチャウ
    セッキョクテキゲンパツシュギ
     ヘイワコッカゴケイウケイシケイ
      ケンポウカイシャクミズホノスマホノ
       GOGOミクスベノアベノGOGOミ…グシャッ!
                           ――激突 

この後 自国首相のバンザイアタックを先制攻撃と勘違いした
自衛隊と米軍による北朝鮮への大規模な軍事作戦が開始された
やがて中国の参戦により戦火は拡大し第三次世界大戦が勃発した


         《歴史のつぶて:2014年2月27日》







自由詩 歴史の礫 Copyright ただのみきや 2014-02-28 23:04:17
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