象さん
小川 葉



道ばたに
若いビジネスマンが
うずくまっている

心配して声をかけると
苦しそうな顔をして
ほとんど象になりかけていた

大丈夫です
と、忙しそうに立ち上がり
がんばって歩いていく

はみ出すからだを
小さなスーツに収め
鼻がまだ少し膨らんでいる

携帯が鳴る

あ、母ちゃん
心配ないから、大丈夫だから

また鼻が膨らんでくる

電話の向こう
どこかの方言なのか
象の鳴き声が聞こえる



自由詩 象さん Copyright 小川 葉 2014-02-28 22:53:46
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