買い物
山部 佳

ストッキングを穿いたブタが
元町通1丁目のシャネルの前で
レトロな街灯に凭れてスマホで遊んでいる
二本しかない指で器用に画面を擦る
時折落ちてくる紫色のエクステを
けだるげな雰囲気を演出しながら掻き上げる

私は一方通行に憤っていた
先ほどすぐ近くに見えた
ワンコイン駐車場に行き着けなかったのだ
こんな道路規制にした体制側が悪いのだと
自分ひとりで決めて路駐して降りたとたんに
これだ

ブタは今年の夏の水着サイトから誘導されて
「この夏,スリムなボディで悩殺」フィットネス…アホか
どうやったらそれが悩殺に至るまでになるのだ?
フィットネスクラブに発電機を設置すれば
わが国には原発なぞ不要になるのだ

私の用事はタラタラした店員のおかげで
10分と踏んでいたのが40分もかかった
出したカードがアメックスのゴールドだからといって
余計なものまであれこれ薦めるのはやめて欲しいものだ
私はただ指定されたバッグを買いたいだけなのだ
グッチがイタリアの有名なかばん屋だということくらい知っている
私のパンツなんかイオンの安売りで充分なのだ

あわてて店を出ると
相変わらず街灯のブタはスマホ
そして
私のC350のフロントガラスにべったりと
あの醜い黄色地に赤と黒の印刷物を認めたのである


自由詩 買い物 Copyright 山部 佳 2014-02-27 22:37:43
notebook Home