一瞬の、平和
小川 葉



人は殺しあった
動物も殺しあった

植物もまた
日向と日陰に生まれ
殺しあうつもりもなく

日陰の植物は死に
日向の植物は育った

人は人を殺すために
生まれてきたのではなかった
動物もまさか
自らの肉が人に食べられるために
生まれてきたのではなかった

ただあるのは
この世に生まれた一瞬の懐かしさ

生まれた時こそ
平和で
平等な時はない

その懐かしさだけが
永遠に
繰り返される平和

そこには
戦争の予感もなく
生きることの辛さもなく

そこをはじめに
人生ははじまり
なにかと戦い、戦いぬき、
命を残して
しんでゆく

人とは何なのか

人生という
戦争に勝ち残り
命を残してゆく

人が生まれ
死んでゆくのは
生まれた一瞬にある
その平和に
たどり着くためなのか



自由詩 一瞬の、平和 Copyright 小川 葉 2014-02-24 23:49:10
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