故郷からの便り
ヒヤシンス


風の便りを聞いて私の心は再びこの村へ戻ってきた。
今日は良く風が見える。
微かな秋の名残は遥かに遠く、木々の下に集まった落葉の談話が心地良い。
こんなに風の見える日は、きっと私の村も雪化粧に頬を染めていることだろう。

しかし私は未だ帰らない。
帰る時ではないと私の心が言ったのだ。
私は私の心に従順で、またあなたを裏切ってしまう。
心の故郷は常に私と共にあるというのに。

こちらでは気の早い蝋梅が黄色い花を咲かせ、盛りの時を迎えている。
私はこの小さな都会の公園でささやかな春の芽吹きに故郷を想う。
辺り一面雪景色に彩られているあの村を。

今日は本当に良く風が見える。
白く透き通った清い風は旅情と郷愁を乗せてそっと微笑む。
純粋な誘いに感謝して、静かに胸へ仕舞い込む風の便り。


自由詩 故郷からの便り Copyright ヒヤシンス 2014-02-24 22:45:33
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