行く手の道
ヒヤシンス


雲海を眼下に望み、聳え立つ古びた塔の最上階。
囚われの身となったあなたは何をして過ごすのか。
小部屋にあるのは、色の剥げた机と椅子と机上に朽ちた薔薇の花。
寒暖もなく、感動も無く、共に笑い合える仲間さえいない。

それではあなたは小部屋の窓からその身を投げるか。
もしくはあなたの生きた証を床に転がっている小石でもって壁一面にしたためるか。
それともいつ来るかも分からない誰かの助けを待つというのか、ただ生きながら。
これまでの人生で味わった事のない孤独感は決して温もりの上に成り立ちはしない。

しかし安心したまえ。あなたは守られている。
薔薇は朽ちても次の蕾がその時を待っている。
孤独を愛するというあなたは周囲の温もりがあるからこそ孤独でいられるのだ。

現実というものには、寒暖の差があり感動もあるだろう。
雲海は霧散して幻想の塔は跡形もなく消え去ることだろう。
だから私はあなたと共にゆこう。陽光に輝く行く手の道を。


自由詩 行く手の道 Copyright ヒヤシンス 2014-02-24 22:41:11
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