饅頭
山部 佳
再就職先の紹介をした知人に
立派な菓子折りをもらった
上用饅頭が詰まっているものと
内心ほくそ笑んだが
上品な包装を開けてみると
見事な上げ底であった
しかし
饅頭を取り除けた底をよく見ると
なにか思わせぶりなつまみ
知らず手が震えた
頭がちょんまげになってはいないかと
そっと触ってみたが
いつもの少し薄くなった頭髪に
ほっとため息をついた
底蓋を開けると
そこにパステルカラーのカード
百均でよく見掛けるカード
それにメッセージ
「この度はお世話になり、ありがとうございます。
なにか気のきいたものを、と思ったのですが
今の私にはこれが精一杯です。
なにか別のことを期待されたのでしたら、すいませんでした」
見透かされとる…
きまりの悪い曖昧な笑顔を妻に向けた
妻は黙ってお茶を淹れ
二人で饅頭をひとつずつ食べた
饅頭は甘みが上品で切ない味がした
彼を責める気にはならなかった
私も同じように仮面を使って
自分を底上げしているのだから