饅頭
山部 佳

再就職先の紹介をした知人に
立派な菓子折りをもらった

上用饅頭が詰まっているものと
内心ほくそ笑んだが
上品な包装を開けてみると
見事な上げ底であった

しかし
饅頭を取り除けた底をよく見ると
なにか思わせぶりなつまみ
知らず手が震えた

頭がちょんまげになってはいないかと
そっと触ってみたが
いつもの少し薄くなった頭髪に
ほっとため息をついた

底蓋を開けると
そこにパステルカラーのカード
百均でよく見掛けるカード
それにメッセージ

「この度はお世話になり、ありがとうございます。
なにか気のきいたものを、と思ったのですが
今の私にはこれが精一杯です。
なにか別のことを期待されたのでしたら、すいませんでした」

見透かされとる…
きまりの悪い曖昧な笑顔を妻に向けた
妻は黙ってお茶を淹れ
二人で饅頭をひとつずつ食べた

饅頭は甘みが上品で切ない味がした
彼を責める気にはならなかった
私も同じように仮面を使って
自分を底上げしているのだから


自由詩 饅頭 Copyright 山部 佳 2014-02-24 21:47:32
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