チイさい春
nonya


春がいる

駐車場の奥の
ハイブリッド車伝いに
ブロック塀の上に飛び乗った時
チイ子はそう思った

春がいる

朝の見回りで
ナワバリ荒らしのクロに
やられた三角耳がまだ痛むけれど
るんっと尻尾を立てて
チイ子は歩いた

やっぱり春がいる

とあるお宅の玄関前は
お気に入りの休憩スポット
ここの丸顔の奥さんには
「ミイちゃん」と呼ばれているが
チイ子はチイ子

ぜったい春がいる

放り出されたスコップの先から
ほんのりと若い土の匂い
鉢植えの上に残された雪の
照り返しは思いのほか眩しい

薄汚れた冬の毛並みを
丹念に毛づくろいした後
きっちりと前脚をそろえて
チイ子は目を細めた




自由詩 チイさい春 Copyright nonya 2014-02-24 21:32:24
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