春のおおかみ
平瀬たかのり

ぐうっと伸びる
四肢が
おのれにおのれの目覚めを知らせる
 
大あくびが
まずは昇ったばかりの太陽を食らって
牙が汚く光る

ゆっくり開いた目
の血走り
冬の間中眠っていたというのに

のっそり身を起こせば
爪がまずは殺す
萌える野に生まれた草を

もう一度あくび
上あごと下あごに架かっていた
涎、煌きながら垂れる

やわらかな風に
混じっていく臭い
くさい臭い
えづくほどの獣臭が
春の息吹に孕まれ
漂いはじめる

やつらの声を待ってみるが
聞こえてこない
どうやら俺が最初に目覚めたらしい
ならばと顔を青空へ
吠える

弱きものどもの
耳が立ち、柔毛が震える
そこここで


自由詩 春のおおかみ Copyright 平瀬たかのり 2014-02-24 21:06:11
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