早春素描
イナエ

ひび割れた指先から 
冬の滴がしたたり落ちて
大地に染みこんでいくとき
温い風に梢を揺すられ 
慌てたまんさくは
葉芽を出すことも忘れて
よじれた花を開いてしまった

北の風に身をよじっていた木々の
足元にオオイヌノフグリが芽吹き
大地にひれ伏した姫ヨモギが
葉を持ち上げる

眠っている土に鍬を打ち込み
たたき起こせば
まだ寝ぼけている切り口にひびが入り 
大地はうっかり体臭を吐き出す

早春の光に
顔を上げるオオイヌノフグリの
賑やかな笑い声
に土は恥じたのか
湿った切り口が
淡い紅に染まる




自由詩 早春素描 Copyright イナエ 2014-02-24 10:53:44
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