いいことや悪いことないまぜ ごく短く十二篇
クナリ
■そんな人だとは■
あなたがそんな人だとは思わなかった
ずっと疑っていたのに
とっくに信じてもよかったのだなんて。
■冗談■
今にして思えば、冗談のような愛情だった。
□芝居□
冗談だったんですよね。
■死後■
怖くはありませんか
今となってはあなたはもう
決して僕に忘れられるということがないのですよ
これほどのものを残していくのですし
あれほどのものを持っていってしまうのですから
なぜ一度きりなのか人生は。
■欠落■
欠落していてごめんなさい
その欠落が自分らしさだと言い聞かせていた頃が
いちばん私らしくなかったよ
なりたい私からいちばん遠かったんだって
だから今がんばってるんだよ。
■泣き顔■
自分で自分をとうにあきらめていたせいで
あの頃は泣きもしなかった
あの頃は、ですね
今は、君がお分かりのとおり。
■質問■
私が本当に気づいていないと思っていたの
あなたは本当に気づいていなかったの。
■安堵■
君が幸せそうに笑っているところを遠くから見ると、
本当にほっとする
僕がいなくても幸せそうにしている君を見ていると、
本当に救われる。
君にとって取るに足らない僕で、本当に良かったよ。
■牙■
あなたにだけは従順になれなかった
あなたにだけは認められたかったから。
■選択■
僕を選んではいけない
お互いに一番好きな相手なんかと一緒にいたら、
幸せになれるはずがない。
■山積みの未解決事件■
一度噴出した問題が、
愛情によって、
良い形に解決したことなど、
今までに一度だってあるんですか
ごまかしは、決着じゃない。
■早く言ってよ■
あなたと出会うとわかっていれば
今よりましな自分くらいには
なろうとしていたものを
慌てふためいた姿ばかり見せて
小ざかしいでしょう
見苦しいでしょう
でも、今が一番いい私なんですよ。