息をすって
加藤

箱を開けたら
静かなところ
あんなにうるさかった
音を忘れて
今 立っている

あふれるのは
いつもやわらかいもの
何度
助けられたことだろう
今日すら
また救われ
何度もこうして
起きあがり

いつかいっていたことを忘れた私をうらむか それとも
ほっとしてしまうのか
それはけっこうさみしい

よろこび悲しみこんにちは
今は中身のない話をしたい
もともとなかったようなものだから すっからかん
歩いたところだけがまだきらきら揺れる気がする

きれいな子や可愛い人 うすれていく日々
熱やからまりや 冷めてはほどけていく日々
マンガや迷信や 通りすぎていく日々
そして忘れたことを思い 思うことを忘れてしまう

一緒に見ていたところは なくなったけど
同じ空気が 気持ちが
新しい感情を呼び覚ます

常に新しくなって
また古くなって
ここにいるかぎり
あきらめる方法はどこにもない
やわらかい光を
思っている


自由詩 息をすって Copyright 加藤 2014-02-20 22:50:51
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