泳げない魚
朧月

釣り堀で釣りをするのがすきだ
どこへもいけない水の底で
大きな魚がひそんでいる

敵は慣れたもので
エサが沈んできてもあわてない
口先でふれては
はねかえる糸がエサを落とすのを待って
優雅にくわえてゆく

のんびりすごすつもりが
次第に無心になって
ただ一点のうきをみつめている

そこは海のようでもあり
私こそが釣り堀の中の魚のようでもある

魚はどこへもゆかない
釣りあげられてもおなじ堀の中の
釣りかごにいれられるだけ

ちょうど一時間
私と魚はおなじ釣り堀でむきあった
立ちあがる私に
どこへゆくのだ
といいたげな魚と目があった


自由詩 泳げない魚 Copyright 朧月 2014-02-20 16:27:20
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