【紫】ほかならぬむらさき オムニバス三編
るるりら

【透明なマグマ】


あれからというもの踏切が 透明なマグマだ
車を走らせていて
次第に車を減速させ
遮断機が ゆっくりと降りている
車と車の隙間を ゆっくりと歩いていた猫が 突然走りだし
けたたたましい通過音とともに
突然 猫の姿が 消えた。もってゆかれた。どこに。どこにいったの 猫。 


紫外線をあびて 列車はゆく
むらさきのそとを 列車がゆく


あれからというもの踏切で止まるたびに
世界は透明なマグマ 世界はムラサキ
打撲の色に うずき、 今日も遮断機が上がらない




【どこにゆきおんな】




激しい雪の速度が とまり 
かすかに開いた雲間より わずかに とどいた光
反照の時間で 溶解したパンタグラフが くるくる まわる
なあ どこにゆきおんな。こどものころは ゆきおんなと 呼ばれてましたのや

おんなが列車に揺れている おんなはダイヤモンドを選びたい
マテリアルを選びたい
待てリアル まてまてリアル おんなよおんな どこに行く

ぽっかりあいた しろいあな
そのむこうがわに ダイヤの星があるそうな
炭素でできたダイヤなら

灼熱に燃えるダイヤの紫を下さいな
もっと刺激を もっともっと
この手にすでにある透明を もっともっと




【うめぼし】

 



彼女が その唄を歌うとき、そこには
うめの 花が 咲く


ふりつもった ゆきのような やみと ひかりが
彼女の瞼の中で 息づき
終焉にしか ほどかれることのなかった足枷も ほどかれて
ごつごつと節くれだった その指を
おとめのように 胸に 押し当て 
わきあがる熱は 輝きを放つ


あなたの見たという 焼野原に あなたの梅が咲く
あなたがつけただろう白い雪の上の 立体の白い足跡が わたしに歌う


春には梅が咲くことを
その梅の実を紫蘇色にそめた日々のことを  わたしに歌う








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*資料*うめぼしのうた <『尋常小学読本 巻五』[より>

二月三月花ざかり、うぐひす鳴いた春の日のたのしい時もゆめのうち。
五月六月実がなれば、枝からふるひおとされて、
きんじょの町へ持出され、何升何合はかり売。もとよりすっぱいこのからだ、
しほにつかってからくなり、しそにそまって赤くなり、
七月八月あついころ、三日三ばんの土用ぼし、思へばつらいことばかり、
それもよのため、人のため。しわはよってもわかい気で、
小さい君らのなかま入、うんどう会にもついて行く。
ましていくさのその時は、なくてはならぬこのわたし。

*参加団体*

novelistの「詩人サークル 群青」の二月の課題【紫】

http://book.geocities.jp/sosakukobo_gunjyo1/







自由詩 【紫】ほかならぬむらさき オムニバス三編 Copyright るるりら 2014-02-20 10:35:40
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