想春
藤原絵理子


冬の陽の
頼りなげなひと筋ふた筋
枯れ草に寝そべって
融け残る雪はナフタリン

女王蟻はせっせと
ナフタリンを袋に詰める
春に生まれてくる子へ
衣装箪笥の虫除けにする

見回せばいつしか
サクラの木の根元は
女王蟻だらけ−猫の額ほどの場所

おりしも昼寝にやって来た猫が
枯れ草の陽だまりに蹲る
細めた眼と丸めた尻尾に春の気配


自由詩 想春 Copyright 藤原絵理子 2014-02-20 00:09:04
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