残されたもの
春日線香

不発弾を掘り出したというので見にきたが
大きな穴が埋められもせず空いているだけだった
校庭には名残の雪が汚れた骨のようで
からっ風が髪を乱して吹き去っていく
花壇にはパンジー どれも顔みたいに見える
池の鯉は氷の下で口をぱくぱくさせている
下校の時刻を告げる鐘は消えやらず
やがてあたりは夜の闇にまぎれて
念のためにもう一度覗きこんだ穴の底にひとつ
小さな白い卵が産み落とされていた


自由詩 残されたもの Copyright 春日線香 2014-02-19 00:06:12
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